平松慶さん

平松慶:年間沖縄滞在日数30日以上を10年間続け、慶良間の海を「母なる海」と言い切る沖縄愛好家。繊細な観察眼と緻密な組み立てで“出して取る”若手No1のパワーフィッシャー。彼のトレバリーが今年もシーズンの幕開けを告げる。





自己の進化のために慶良間に帰る釣り人たち

文:平松慶 写真:柳沢昭

   サザンフィッシングvol1より

(20㎏、35㎏のWキャッチで幕を開けた2006年度・平松さんのトレバリーワールド。サザンフィッシング創刊号から、リクエストに応えweb初公開です。)
平松35kgの重みをしっかりと抱き喜びに浸る(ニコパチ)。

“2月風廻り”ニンガチカジマーイが吹いた後。いつもの様に私の気持ちは沖縄へ向いていた。「風廻りが終わり、デイゴが咲いたよ」と沖縄の仲間達が連絡をくれるのだ。
例年、沖縄滞在30日以上。これを10年間続けてくると、沖縄本島という地に対する情は人一倍深く、熱い想いを持ってしまう。今年もやっぱりきちんと通う事を昨年のうちに予定立てておき、沖縄本島から決して身をそらさぬ様にしてきたのであった。
那覇北マリーナには、すでに寄宮丸のキャプテンである森山紹己船長が船内整備を済ませて待っていてくれた。日焼けした顔には早く行こう、という強い気持ちが出ている。どうやら午後一番の潮が気なっているようであった。

皆それぞれタックルをセッティングし終わると、紹己キャプテンにドラグのチェックをしてもらう。この行動はとても大切である。ドラグに自信の無い人ほどルアーを出して引っ張ってもらいドラグのスムーズさをチェックしてもらいたい。恥ずかしい事はこれをやって貰う事、ドラグを調べてもらう事ではなく、魚を掛けてから切られる事である。ドラグ調整の不備で切られるほど情けないことは無い。出港前には皆キャプテンからチェックをしてもらい、準備に安心を加えて沖へと出たのであった。
那覇北マリーナから直ぐにあるチービシ(慶伊瀬島)よりスタート。神山島、クエフ島、ナガンヌ島と続く無人島の30Mからかけ上がるシャローエリアを中心に船を流し始めた。12時前からの実釣開始であった。まだ、雲はどんよりと低く、沖縄の空を覆っている。慶良間諸島の方を見ても変らぬ厚い雲が続き、スッキリとしない重い気圧がこの海域全体に圧し掛かっている様である。

大型ネットで掬ってもらいランディング成功。森山紹己キャプテンと喜ぶ。
どんよりと重い雲の下キャスティングを繰り返していく。

チービシの中で最も実績のあるポイント、ナガンヌ島の先にあるナガンヌ曽根で粘ってみた。20Mラインにある曽根伝いに、ベイトであるグルクンが付き、それを追ってトレバリーが回遊している。私は、過去何度もこのポイントで良い釣果を手にしている。
ハイプレッシャー下における、慶良間諸島エリアでのトレバリーゲームは私自身様々なフィールドを廻って絶対的に強く感じる難しさがある。この難しさがそれ以上に負けず嫌いな私の性格を刺激し、さらに良型を求めさせる。ストイックになる自分を十分に分っていながら、この地にかける想いは強い。年を越すごとに強くなるばかりである。
それは、トレバリーという魚が好き、沖縄という場所が好き、慶良間というところで想いを寄せる自分が好き。その全てが当てはまり、やっぱり最後にはこの地が大好きなのである。だから難しいならそれを一つずつ克服して自分をスキルアップさせ、ここへ帰ってくる。ここで通用したら、どんなフィールドでも魚を手にする事が出来るであろう。それくらいの想いを持って毎回入っているのだ。だから、より真剣になるし、より熱い想いとなっているのである。

昼からの潮でベイトが沸く頃である。大潮であるこの日、いつもは穏やかであった前島北のシャローエリアは大きく潮があたり、様子が少し違っていた。潮波の中を狙うそれはまるでインドネシアでの釣りのようだ。太い潮の暦なだけに、チャンスはいつ来るか分らない。その後、黒島立柱、儀志布島南側、渡嘉敷島へとまわったのだが、バイトがない。焦りが出始めている。16時。ここで一発勝負となる。渡嘉敷島にある運瀬へと船を走らせた。何となくベイトの立ちが今ひとつであったのだが、潮はきれいに流れていた。水温23度。トレバリーを狙うに申し分ない。
時間的にこのポイントがラストとなる。船を潮上に置き、ゆっくりと運瀬の脇を流れるようにしてスタートとなった。私は最も信用しているシェルシェーピングルアーズのツイスター170をキャストする。みよしには女性一人でツアーに参加した中村留美子さん、そして柳沢昭さん、瀬田郁夫さんと並んでキャストをしている。
船は運瀬に近づくにつれ、流れが速くなるような錯覚すらした。目標物があると船のスピードが手に取るように分ってくる。もう少しで瀬の近くという所でみよしの中村留美子さんに強烈なバイト。フッキングを入れている。その手にするロッドは強く弧を描き、魚からのファイトをダイレクトに受け始めていたのがわかった。
「よっしゃ、フォローを」といった時に私の前でその時ベイトが飛んだのだ。気になる。もう一度だけそこにルアーをキャストしてやると、私のルアーにトレバリーがバイトしてきた。・・・しまった。その時素直にそう思った。チャンス、と感じたからキャストをしたものの、ダブルヒットに船のフォローは難しい。まして、もう一人は女性である。

中村留美子さんとWキャッチ。

渡嘉敷島「運瀬」にてヒット。先に見える運瀬に魚は全力で戻ろうとする。その強さを全身で受け止める。


私は艫で魚の突込みを往なしながら、留美子さんの魚のランディングを待つ。大型ネットで掬ってもらった魚体を確認して直ぐに森山キャプテンへフォローの指示を出した。瀬のエッジ目前5m。船も危なく前進をして魚を浮かす。ギラっとした鈍い魚光が見えた時、良型であると感じた。派手なファイトはなく、確実なるリフティングで魚はネットへと収まった。キャッチである。17時。一瞬にして2バイト。2キャッチ。
女性、中村留美子さんが20㎏、平松35㎏のトレバリーをWキャッチという派手な2006年度の沖縄トレバリーシーンのスタートとなったのであった。
年間滞在30日を貫いて10年目。ウルー暦の今年、私達のスタートは最高のものとなったのであった。その夜、“ぜんざいの富士家”の親友らと共に20㎏と35㎏のトレバリー、そして再会への乾杯で夜は更けたのであった。母なる海、慶良間への情熱、海への感謝。喜びの古酒を仲間のおじいが私にそっと飲ませてくれた。




     平松慶オフィシャルサイト

     寄宮丸




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